早大の国際教養学部は、2018年は、大問4つ(全40問)で、そのうち正文誤文判定問題が14問あった。
早稲田の他学部と同様に早稲田特有の正誤判定問題の出来が得点(合否)を左右する。なお、記述問題も13問ある。
☆「国際教養」という看板を強く意識した問題が毎年出題されている。
①その象徴が英文史料問題で、近現代の英文史料をリード文にした大問が毎年出題されている。
②古代・近世では、対外交渉史が頻出しており、近現代では国際関係史(外交)の視点が協調された文章(史料)をリード文にした大問が定番となっている。
早大の国際教養学部を目指す人は、上記の学部側からの強い要求(この分野に強い学生が欲しい!)を素直に受け止めた対策をたてよう!
そのためにも、今ここで2018年の過去問(国際関係史)を解いてみよう。
2018年 国際教養学部 第3問 解答と簡単な解説付き
次の史料は,アメリカ在住のある日本人歴史学者が書いた手紙(草稿も含む)からの抜粋である(一部要約ないし表記を変更して現代語訳)。これを読み,後の問に答えなさい。
① a米政府が片方的に通商条約を破棄した行為は,他国に関してなら必ず民間が反対すべき性質のもので,日本に関しても,心の中では反対の人も多くありますが,日本の中国における中国人と米国商業とに対する妨害に呆れる余り,誰も反対を明言するものはなく,かえって当国官民一般の感情のoutrageされたことの一表現として賛成している模様です。
② 満州事変の始めには人々は皆驚きましたが,はなはだしく非難するものは案外少なく,事情がわかるまで評論は差し控えている様子でした。しかし,追々日本の軍事活動が拡大するに及んで,もはや最初より日本が宣言した在住日本人の保護のためのみとは誰も見ず,一般の人は日本が満州を地域的に併合する目的だと考えています。やや考える人はこのようには断定しませんが, A の政権を駆逐して,日本が莫大な利権を得る下心だと思うようになっています。このような見解が正当ではないという日本の説明は徹底せず,どのように説明してもただ一時の美言だとしてこれを疑う傾向が次第に増し, B 事変が起こった後は急に増加しました。満州については,幸い犬養首相が簡潔に明言されたため,ききめがあったように見えます。
③ 去る3月30日北京発の電報で初めてb日本の要求二十一ヵ条なるものが逐条新聞に掲載され,これによって初めて要求が何かを知り得ました。これについて私は多くの人と問答しましたが,この要求に対する歴史的事情が説明されていないため,そのある点については,日本の要求がほとんど独逸的に専断だ,不当だと思う人士が少なくありません。
④ アメリカにおける日本に対する人気を一言で申せば,日本は韓国を圧制し,また,c満州では露国に代わって中国の主権を傷つけ,列国の利権を害しようとする傾きがあるという感情です。これには随分誤解もありますが,ともかくこれが一般の人気です。
⑤ このたびのd米国政府の提議の動機が何か,私は存じません。あるいは海備制限の世論が動いている折から,英国では日英同盟に関する議論が盛んなのを見て,二者を無造作に連結して提出したものかもしれません。
⑥ 戦争が起こるや否や,米国民は一様に独逸皇帝の責任を問い,英仏に同情を表しています。ところが,日本の独逸に対する要求が新聞紙上に現れるや,独逸に対して幾分か同情を感じるようになり,また,日本に対して不快の情を抱くようになりました。その後,日清戦争後の独逸の C に関する所為,および D 租借の事情などが新聞紙上で民間に伝わるようになりましたが,右のような感情を変える理由とはなっていません。
⑦ e日本がいよいよ独伊と軍事同盟を十年間締結したことは,有史以来の大誤失であると存じます。流星が一時輝くのに惑わされて,これに貴き祖国の運命をつないだことは,いかに東洋における不条理の希望を実現するための策だとはいえ,返す返すもこの上なく遺憾です。
〔問〕
1 下線部aの原因に関する説明として,正しいものはどれか。1つ選び,マーク解答用紙の該当記号をマークせよ。
ア 日本が北部仏印に進駐して援蔣ルートを遮断しようとしたため。
イ 日本がソ連と日ソ中立条約を結んだため。
ウ 日本が「東亜新秩序」の建設を声明し,南進政策を進めるなどしたため。
エ 日米衝突を回避するための日米交渉が不調におわったため。
オ 日本が「大東亜共栄圏」の建設を本格化したため。
2 A は,当時,中国満州(東北地方)の実権をにぎっていた軍閥の中心人物である。その人物の姓名を漢字で記述解答用紙に記入せよ。
3 B に該当する地名を漢字で記述解答用紙に記入せよ。
4 下線部bに関連する記述として,正しいものはどれか。1つ選び,マーク解答用紙の該当記号をマークせよ。
ア 外務大臣加藤高明が中心となって中国に要求した。
イ 要求のなかには南満州を日本に譲渡することなどが含まれた。
ウ 中国の段祺瑞政権はこの要求の受け入れを拒絶した。
エ 中国ではこれに反対して,この年五・四運動がおこった。
オ アメリカなどが反対したが,日本は要求すべてを中国に承認させた。
5 下線部cに関連する記述として,正しいものはどれか。1つ選び,マーク解答用紙の該当記号をマークせよ。
ア 日本はロシアから旅順・大連を租借した。
イ ロシアは奉天以南の鉄道利権を日本に譲った。
ウ この地域を統治するため日本は関東統監府を設置した。
エ 日本はこの地域の鉄道経営にあてるため国営会社を設立した。
オ アメリカはこの地域の権益を日本が独占することに反対した。
6 下線部dにもとづいて開催された会議の名称を記述解答用紙に記入せよ。
7 C に該当する地名を漢字で記述解答用紙に記入せよ。
8 D に該当する地名を漢字で記述解答用紙に記入せよ。
9 下線部eに関連する記述として,誤っているものはどれか。1つ選び,マーク解答用紙の該当記号をマークせよ。
ア この軍事同盟は近衛文麿内閣のもとで締結された。
イ ドイツ・イタリアが結んだ枢軸に日本も加わっていた。
ウ ドイツ・イタリアが結んだ防共協定に日本も加わっていた。
エ 防共協定の存在にもかかわらず,ドイツは独ソ不可侵条約を締結していた。
オ アメリカはこの軍事同盟の締結に前後して,対日経済制裁措置をいっそう強化した。
10 それぞれの手紙を時期の早いものから順に並べた組み合わせとして正しいものを下記から1つ選び,マーク解答用紙の該当記号をマークしなさい。
ア ④→③→⑥→①→⑤→②→⑦ イ ④→②→⑤→③→⑥→①→⑦
ウ ④→①→②→③→⑥→⑤→⑦ エ ④→⑥→③→⑤→②→①→⑦
オ ④→⑤→①→⑥→③→②→⑦
解答
1 ウ(1939年、日本の北部仏印進駐⇒①1940年1月、日米通商航海条約の失効)
2 張学良(早稲田が大好きな人物) 3 上海(事変) 4 ア(第二次大隈内閣の時の加藤高明外相は早稲田では頻出する!)
5 オ 6 ワシントン会議 7 青島 8 膠州湾
9 ウ(1936年日独防共協定、その後37年に日独伊防共協定)
10 エ ④(1905年の日露戦勝利〜)⇒⑥(1914年第一次世界大戦勃発)⇒③(1915年二十一か条の要求)⇒
⑤(1921年アメリカ大統領ハーディングの提唱によるワシントン会議)⇒②(1931年満州事変)⇒①(1940年1月日米通商航海条約の失効)⇒⑦(1940年9月日独伊軍事同盟)
上記の大問の中身は、繰り返し国際教養学部や他学部で出題されている最頻出事項で早稲田レベルだと「易しい大問」と言える。
「戦略的かつ効率的」な過去問研究を行って本番を迎えた人ならばは、ほぼ完答できる問題と言えよう。
さらに詳しい国際教養学部対策を知りたい人はお問合せください。
吉田塾がとても大切にしている丁寧なカウンセリング(無料)段階においても
国際教養学部の日本史を「戦略的かつ効率的」に攻略する道筋を伝授しています。
本気で早稲田合格をめざす人を吉田塾は本気で応援しています!