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共通テスト「歴史総合、世界史探究」

2025年共通テストの歴史総合(世界史探究編)の分析

「世界史探究」受験者にとっての共通テスト「歴史総合」(2025年1月実施)についてここで考察・分析しておこう。「世界史探究」受験者に出題された「歴史総合」は、試行テストなどで示唆されていた問題よりも取り組みやすい問題が多かったというのが受験生の声であった。そのため、「歴史総合、世界史探究」の平均点(66.12点)は、「歴史総合、日本史探究」(56.99点)よりも10点近く高くなっている。
2026年度の試験では、両者の平均点の調整も行われるため「世界史探究」受験者に出題される「歴史総合」の難易度は、2025年1月の問題よりも少し難度が高い試行問題レベルに合わせたものになるというのが吉田塾(塾長吉田健志)の見立てです。
以下に共通テスト第1問(歴史総合)から日本史の知識がある程度必要な小問(3問)をピックアップして分析(解答・解説)を加えたものを紹介しています。
ぜひ実際に解いて実感してください。

2025年 世界史探究の歴史総合 A
歴史総合の授業で、身の回りの諸事象が日本や世界の歴史とどのようにつながっているかを、装いの歴史を通して、資料を基に探究することとした。これらの活動に関して述べた次の文章ABを読み、後の問い(問1~8)に答えよ。(史料中には、省略したり、改めたりしたところがある。)
A 政治家・官僚・軍人の装いを題材としながら、図1・2から読み取れる情報について生徒と先生が話をしている。

図1(略)

高橋:図1では、装いの異なる二つの集団が向き合っています。
水野:左側の人たちは、頭の後ろで髪を結っています。これは辮髪(弁髪)ですね。
高橋:図1の説明文にも、そう書いてありました。右側で応対しているのは、日本人のようです。国家間の公式の外交の場で洋服を着ています。
先生:そうなると、ⓐ図1の会談が行われた時期を推定できますね。

図2(略)

中島:私が見つけた図2は、1878年にⓑベルリンで開催された国際会議の様子を描いています。
大井:みんな洋服を着ていますが、右端の人たちの帽子は独特ですね。
先生:これは「トルコ帽」といって、オスマン帝国の政治家や軍人が着用した被り物です。19世紀前半に洋装化と合わせて導入されたものですが、礼拝の邪魔にならないよう、つばが付いていません。
大井:オスマン帝国の近代化改革は ア と呼ばれますが、トルコ帽の採用は、 イ することで帝国の立て直しを図るという、この改革の方向性を象徴しているようです。
先生:素晴らしい考察です。このように図像から読み取れる情報は多いのですが、ほかの資料と組み合わせるとさらに分かることがあります。例えば、ⓒ政治家や軍人が来ていた洋服は、次第に庶民にも広まっていきます。統計資料から、この点を探究してみましょう。
  

問4 下線部ⓒに関連して、洋服の素材生産に興味を持った高橋さんたちは、日本と中国における綿糸の生産量と自給率を調べて、グラフを作成した。綿糸の生産量に関して述べた文あ・いと、グラフから読み取れることに関して述べた文XYとについて、最も適当なものの組合せを、後の①~④のうちから一つ選べ。

綿糸の生産量に関して述べた文

あ 綿糸の生産量は、力織機の台数から推計できる。
い 綿糸の生産量は、紡績機の錘数から推計できる。

 

グラフから読み取れることに関して述べた文

X 中国では、1910年の時点で、国内生産量が国内消費量を上回っていた。
Y 帝国議会開設後の10年間に、日本の国内生産量は5倍以上増加した。

 

① あ―X
② あ―Y
③ い―X
④ い―Y

解答(解説)正解は④ 「綿糸の生産量に関して述べた文」の「あ・い」では、力織機と紡績機についての知識が問われている。力織機は、蒸気力や電力を動力として織物(布)を生産する機械である。紡績機とは、糸を作る機械である。本問は、「綿糸の生産量は~」なので「い」の文が正解となる。グラフから読み取れることに関して述べた文」では、Xの文はグラフを正しく読み取れれば「歴史的知識」なくとも誤文と判定できる。一方、Yの文は帝国議会開設が1890年であるという時代感覚(年号暗記)がないと確信をもって正文とは判定できない。本問はX誤文と判定しやすいので消去法で正解を得ることは容易かったであろう。

【吉田の分析・アドバイス】(クリックで展開)

第一回帝国議会の開催が1890年という知識は、過去のセンター試験・共通テストなどで繰り返し問題を解くためのキー(前提知識)と出現しているので今後も注意が必要である。2026年度の試験では、ある程度ちゃんと「歴史総合」の日本史部分を押さえてないと正解にたどり着けない問題が少し増える可能性があるので「歴史総合」対策も疎かにしない姿勢が大切です。

 

2025年 世界史探究の歴史総合 B

B 三つの班が、女装の装いに関する資料を収集し、発表に向けた準備をしている。

問5 1班は、19201930年代の東アジアの女性の装いについて調べ、パネル1を作成した。パネル1から読み取れることや、その背景について述べた文として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。

パネル1

・欧米の最新の装いや髪型を模倣した女性は、1920年代後半の東京や大阪で、モダンガールと呼ばれた。
・大衆化の進展に伴い、1930年代の京城や上海、天津などでも、モダンガールの装いが見られた。
・上海で19311937年に発行された女性誌『玲瓏』では、モダンガールが表紙を飾ることもあった。

① 日本のモダンガールと呼ばれた女性の髪形は、ロングヘア―を特徴としていた。
② 東アジアでは、独立国、植民地、租界を問わず、モダンガールの装いが見られた。
③ モダンガールが闊歩した1930年代の京城には、統監府が設置されていた。
④ 『玲瓏』が上海で創刊された当時の中国は、中華人民共和国である。

解答(解説)正解は② モダンガールとは、大正末期・昭和初期に東京などに出現した西欧風の新しい生活スタイルとファッションに身を包んだ女性をさし、髪型はロングヘアーではなく短髪である。よって、①は誤文。パネル1より「1920年代後半の東京・大阪でモダンガール」、「1930年代の京城や上海、天津などでも、モダンガールの装いが見られた。」より、京城(現ソウル)が植民地、上海=租界地、天津=独立国(中国)と読み取ることができるので②は正文。③は、「統監府」ではなく「総督府」なので誤文。④は、中華人民共和国ではなく中華民国なので誤文。

【吉田の分析・アドバイス】(クリックで展開)

モダンガールは「モガ」、モダンボーイは「モボ」という略称で呼ばれたことを押さえておこう。

 

問8 3班は、女性の装いに関連して、第二次世界大戦後の女性の社会的地位や女性へのまなざしの変化について調べた。発表準備のために作成したメモIIIIの内容について、古いものから年代順に正しく配列したものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。

メモI

性別役割分業が完全にはなくなっていないことを背景に、「ジェンダー平等を実現しよう」が国連サミットの「持続可能な開発目標(SDGs)」の一つに採択された。

 

メモII

日本で男女雇用機会均等法が制定され、性別役割分業にとらわれず、女性を採用したり昇進させたりすることが、事業主の努力義務とされた。

 

メモIII

アメリカ合衆国では、公民権運動などの高まりを背景に、性別役割分業や「女性らしさ」を問い直す女性解放運動(ウーマン・リブ)が起こった。

① メモI―メモII―メモIII
② メモI―メモIII―メモII
③ メモII―メモI―メモIII
④ メモII―メモIII―メモI
⑤ メモIII―メモI―メモII
⑥ メモIII―メモII―メモI
 

解答(解説)正解は⑥ 「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2015年の国連総会で採択された目標で期間は2016年~2030年の15年間となっています。17の目標が掲げられており、その5.として「ジェンダー平等を実現しよう」があります。男女雇用機会均等法の制定は、1985年(中曾根康弘内閣)。アメリカの公民権運動では、キング牧師のワシントン大行進(1963年)や公民権法の制定(1964年 ジョンソン大統領)を想起したい。よって、メモⅢ-メモⅡ-メモⅠの順となる

【吉田の分析・アドバイス】(クリックで展開)

「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標に関連付けた問題は、今後も要注意だろう。とくに6.の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は1973年の石油危機や2011年の東北大震災(福島原発の事故)、再生可能エネルギーへの転換につなげやすく気になるテーマだ。

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