2025年共通テストの歴史総合(日本史探究編)の分析
「日本史探究」受験者にとっては、2025年1月に実施された「日本史探究」に出題された「歴史総合」は、試行テストなどで示唆されていた問題よりも難しいと感じられる問題が出題されていた。そのためか、「歴史総合、日本史探究」の平均点は56.99点で「歴史総合、世界史探究」(66.12点)よりも10点近く低くなっている。2年目以降もこの傾向が続くかどうかは分からないが、2026年度受験者は、2025年1月に出題された「歴史総合」の各問を分析して2025年と同レベルの問題が「歴史総合」において出題されると想定し、どのくらいのレベルまで「歴史総合」対策をすればよいのかを早い段階で把握しておこう。
以下に「歴史総合」対策が、甘かった受験生が苦戦したであろう問題を第1問から3題ピックアップして分析(解答・解説)を加えたものです。
ぜひ解いて参考にしてください。
A 最初の授業で、児玉さんは国際関係における「境界」に着目して、19世紀後半の東アジア諸国の国境に関連する資料を見つけ、パネルを発見した。
資料
我が国と貴国の条約では、(中略)日清間の境界を確定せず、一昨年に台湾出兵が発生した。昨年また我が国と朝鮮との間で事件が起こったのも、この条約に境界を明記していないためである。(『大日本外交文書』)
パネル
中国王朝を中心とする世界観には、理念上、「境界」はないとされたが、実際には、中国王朝と周辺諸国・諸民族との間には、上下関係で結びつけられた秩序が存在していた。
それは、ⓐ主権国家からなる国際秩序とは異なっていた。そのため、18世紀末にイギリス人マカートニーは、琉球諸島の帰属先に対する戸惑いを記録している。
また、資料は、19世紀後半に朝鮮で起こった事件の後、当時の日本公使が李鴻章に主張したものである。ここからは、日本が清を中心とする国際秩序に対抗しようとしていたことがわかる。朝鮮王朝は、それをどのように受け止めたのだろうか。
問2 資料とパネルから読み取れることや、その背景について述べた文として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 資料中の「我が国と貴国との条約」は、下関条約である。
② 資料中の「事件」が起こったのは、清仏戦争の前である。
③ 資料中の「事件」が起こった時期の日本では、外国人は自由にどこにでも居住できた。
④ 資料中の「事件」を契機に、日本と朝鮮はともに領事裁判権を認めあう対等な条約を締結した。
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本問は、②の清仏戦争(1884年~1885年 1885年天津条約)の時代をおさえていれば解答できる問題となっており、清仏戦争は、「日本史探究」では学習せず、歴史総合の各教科書において重要事項として説明されているので「歴史総合」の習熟度が問われている。
なお、本問はセンター試験から連綿と続く「時代感覚」重視の問題である。共通テストは、細かい歴史用語は知らなくても「時代感覚」(重要年代の暗記も時には必要!)に強い人が高得点取りやすい問題が並んでいることを過去問研究から実感してほしいところです。
B 次の授業で、丸島さんは、疫病の流行が「境界」を意識させることに興味を持ち、先生と話をしている。
(前半省略)
先生:そのとおりです。その後、第一次世界大戦終結から第二次世界大戦勃発までの時期には、政治的対立を乗り越えて、国際保健協力を発展させる動きも見られました。例えばこの時期、 ウ にもかかわらず、国際保健の面では協力がなされたというような事例が挙げられます。
丸島:なるほど、疫病流行は国を越えて起こるものだからこそ、対立を乗り越えて国際協力を実現することが重要だとう認識が、こうして生まれたのですね。
問4 会話文中の空欄 ウ に入る文として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① イギリスが、「光栄ある孤立」政策を堅持していた
② パレスチナに建国されたイスラエルが、アラブ諸国との間で対立を深めていた
③ 日本が、盧溝橋事件をめぐる調査に反発し、国際連盟を脱退した
④ 第一次世界大戦で敗戦国となったドイツが、当初国際連盟に加盟できなかった
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②のパレスチナの地にイスラエルが建国された時期(1948年)は、「歴史総合」の各教科書では詳しく説明されているが「日本史探究」では扱っていない。また④のドイツが国際連盟発足時(1920年)には加盟できず、加盟はロカルノ条約締結の翌年(1926年)であるという時代感覚は、「歴史総合」の各教科書では詳しく説明されているが「日本史探究」では扱っていない。
なお、問2でも指摘したように本問(問4)も時代感覚が強く問われている問題であることが分析によりわかるであろう。この出題傾向に合致した共通テスト対策を確立していこう。
問7 松田さんは20世紀後半の時期に着目して、アメリカ合衆国を含む西側諸国とほかの地域との間の、人やモノの流れに影響を与えた出来事を調べ、メモにまとめた。メモI~Ⅲに書かれている出来事について、古いものから年代順に正しく配列したものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
メモI
チェコスロヴァキアでは、民主化を求める動きがワルシャワ条約機構軍の介入により挫折した。このことが、西側諸国への亡命者が増えるきっかけとなった。
メモⅡ
鄧小平が、「四つの現代化」を国家の基本方針として決定した。このことが、アメリカ合衆国への留学や、企業の相互進出のきっかけとなった。
メモⅢ
カストロが、社会主義政権を樹立した。このことが、アメリカ合衆国に難民が流出するきっかけとなった。
① メモI~メモⅡ~メモⅢ
② メモI~メモⅢ~メモⅡ
③ メモⅡ~メモI~メモⅢ
④ メモⅡ~メモⅢ~メモI
⑤ メモⅢ~メモI~メモⅡ
⑥ メモⅢ~メモⅡ~メモI
【吉田の分析・アドバイス】(クリックで展開)
本問は、2025年の「歴史総合+日本史探究」(全33問)の中で「日本史探究」選択者にとっては、一番の難問であったと思われる。
その最大の要因は、メモⅠ・メモⅡ・メモⅢの文がすべて「歴史総合」の教科書でしか扱われてなくて、「日本史探究」選択者にとっては盲点となるチェコスロヴァキアの「プラハの春」などの時代感覚が問われたことにある。2026年の試験もこのレベルの問題が出されるのかは分からないので「うまくいって80点くらいとれれば」よい目標の受験生なら「捨て問」としても良いかもしれない。しかし、共通テスト(歴史総合+日本史探究)においてハイスコアー(90点以上)をめざす受験生であれば克服しなければならない課題であると言えよう。
なお、「日本史探究」の大問2~大問5についての「吉田の分析・アドバイス」も随時掲載していく予定です。
吉田塾では、「日本史探究」選択の受験生にとって効率的な「歴史総合」対策法を研究し続けています。
「日本史探究」とのつながりを重視した効率的な「歴史総合」対策についてのカウンセリング(無料)やお試し講座も今年度より可能となりました。
「歴史総合」の勉強法などで悩んでいる受験生は、お問い合わせしてもらえれば幸いです。