早稲田大では、各学部において学部特性をかなり意識した問題(大問)が出題されている。

商学部では、近現代の経済史(金融史・産業史など)を重視していて、この分野の骨太な問題が繰り返し出題されている。

また、定番の短文論述問題も近現代分野から出題が続いていることからも、商学部がいかにこの分野を重視しているかがわかります。

この商学部特性を理解する(実感する)ためにも、2018年2月の商学部の問題を解いてみましょう。

「戦略的かつ効率的」に早大商学部の日本史を攻略し、合格ためには、まず何よりも「相手を知る」(敵を知る)ことから始まります!

2018年2月 商学部本試験問題 大問5(解答と簡単な解説付き)

次の文章Ⅰ・Ⅱを読んで,下記の設問(A~J)に答えよ。(Ⅰのみを公開)

Ⅰ 開港は鎖国下で自生的な工業化を進めていた日本経済にイ強い影響を与えたが,庶民の生活を直撃したのは,ロ国際金銀比価への調整過程で生じた激しいインフレであった。物価の騰貴は暮らしへの圧迫を通じて社会不安を生み出し,貿易を否定する攘夷運動にもつながった。もっとも,開港により三貨を核とした幕府の通貨システムの枠組自体が変化したわけでなく,通貨制度そのものへの影響は限定されていた。
通貨制度が変容する契機は政権の交代であった。戊辰戦争に勝利をおさめた新政府はハ様々な制度改革を通じて政権基盤を固める一方,通貨については1871年に新貨条例を制定し,金本位制に基づく通貨制度を目指した。もっとも,実際には銀貨や不換紙幣が併存しており,価値の安定した本位金貨は流通から姿を消していった。大隈重信大蔵卿の下,1870年代後半にはニインフレが激しくなったが,この頃にはすでに同じ1円でも銀貨と紙幣との間に価格差(銀紙格差)が生じており,本位制度は事実上崩れつつあった。
大隈が失脚し,代わって大蔵卿に就任した松方正義は,財政と通貨制度の建て直しを目指して緊縮財政を進めると同時に,中央銀行として日本銀行を設立し,1880年代半ばすぎに日銀券を中心として銀本位制を確立した。
日本がようやく銀本位制を確立した時期に,主要先進国は金本位制に移行していった。そのために不要となった銀が市場に出され,国際市場では長期にわたって銀安(金高)傾向が続いていた。こうした状況をうけて,政府は調査会を設置し,ホ銀本位制を続けるか,先進国に追随して金本位制に移行するかについて議論を重ねた。調査会の論議は明確な決着を見なかったが,金準備問題が解決されたこともあって,1897年に金本位制を正式に採用するに至った。

問A 下線部イの開港が日本経済に与えた影響について述べた文として,正しいものを1つマークせよ。
1.安価な綿織物が輸入され,国内の綿織物業や綿作を圧迫した。
2.織物や武器などの輸入が増加したため,貿易収支は開港当初から大幅な入超であった。
3.最大の輸出品は生糸で,主にアメリカ市場で販売された。
4.改税約書により従価税に改められ,一部の輸入品に対する関税率も引き下げられた。
5.幕府は生糸,茶など5品を江戸の問屋に廻送させ,輸出貿易の統制に効果をあげた。

問B 下線部ロについて述べた次の文章の a ~ c に該当する語句の組み合わせとして,正しいものを1つマークせよ。

日本は海外と比べて a の状態にあったため,大量の b が海外に流出した。そこでこれを防ぐために, b の実質価値を大幅に c 改鋳が行われた結果,物価上昇が引き起こされた。

1. a 銀安金高 b 銀貨 c 引き下げる
2. a 金安銀高 b 金貨 c 引き上げる
3. a 銀安金高 b 銀貨 c 引き上げる
4. a 金安銀高 b 金貨 c 引き下げる
5. a 銀安金高 b 金貨 c 引き下げる

問C 下線部ハに関連して,明治初期(1875年以前)に行われた制度改革について述べた文として,正しいものを1つマークせよ。
1.版籍奉還に伴い旧藩主は知藩事となり,藩も徴税権を失った。
2.四民平等とされたが,華族と平民との通婚は禁じられていた。
3.金禄公債証書を与えて士族に対する秩禄給付をすべて廃止した。
4.内務省が新設され,殖産興業を推進するとともに,警察組織の統轄も行った。
5.年貢負担者であった自作農,小作農に地券を交付し,土地所有権を認めた。

問D 下線部ニの1870年代後半に進展したインフレについて述べた文として,誤っているものを1つマークせよ。
1.国立銀行の急増に伴う不換銀行券の増発がインフレの一因となった。
2.西南戦争の戦費調達を目的とした政府紙幣の増発がインフレにつながった。
3.インフレの中で地租に依存した政府財政の収支は次第に悪化した。
4.農産物価格の上昇により農家の地租負担は実質的に軽減された。
5.インフレ下で輸出超過が続いたため,正貨の蓄積が進んだ。

問E 下線部ホに関連して述べた次の文章の d ~ f に該当する語句の組み合わせとして,正しいものを1つマークせよ。

銀本位制には為替相場の d により金本位国との間で e が期待される点などにメリットがあり,また金本位制には f が容易になるなどのメリットが想定された。

1. d 低落(円安) e 輸出伸張 f 中国などアジア諸国への資本輸出
2. d 上昇(円高) e 輸入増進 f 先進諸国からの資本輸入
3. d 低落(円安) e 輸入増進 f 先進諸国からの資本輸入
4. d 低落(円安) e 輸出伸張 f 先進諸国からの資本輸入
5. d 上昇(円高) e 輸入増進 f 中国などアジア諸国への資本輸出

A 正解は1(2は、開港当初は「大幅な出超」であったので誤文。3はアメリカ市場ではなく主要貿易相手国はイギリスであったので誤文)

B 正解は2(経済史が得意な人=経済の仕組みを理解している人にとっては簡単な問題です。あなたにとってはどうですか?なお本問は

過去に論述問題として出題されたことがある。自分でも書いて説明できるまでの対策が必要である)

C 正解は4(5は小作農には地券は配布されなかったので誤文。)

D 正解は5(5を正文にすると「インフレ下で輸入超過が続いたため、正貨の保有高が減少していた」となる)

E 正解は4(本問も過去に短文論述問題として類題が出題されたことがある。自分で解答文が書けるくらいの対策が必要だ!)

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