京都府立大の全学科共通問題は大問数3題で、大問1が記述式問題、大問2が史料文を利用した記述式問題、大問3が70字の歴史用語説明問題(例年なら3個解答)という設定が20年以上継続している。よって、2020年の本試験においてもこの問題設定が踏襲されるであろう。それでは、「百聞は一見に如かず」だ。実際に2019年の各大問において「京都府立大らしい問題」を取りあげて分析を行ったものを見て行こう。
☆大問1の「傾向と対策」(2019年2月 本試験問題分析)
例年、8行前後の問題文が2019年であれば、(A)〜(F)の6個設定され、空所補充や一問一答式的な記述式の問題(小問)が30個以上(2019年は32個)出題されている。その中でも「京都府立大の傾向をあらわした問題」である(B)と(E)を今ここで実際に解いていくことで「実感」(敵を知る)しよう。
(B) (c)天武天皇の死後即位した( オ )天皇は694年,(d)藤原京へと遷都する。藤原京は国家の重要な政務・儀式の場である大極殿や朝堂院に,それまではもっぱら(e)寺院建築に用いられてきた礎石や瓦を採用し,条坊で区画した京内に有力な王族や中央豪族を集住させるなど,中国の影響を受けて成立した日本最初の本格的宮都であった。京内には大官大寺や薬師寺などの大寺院が官寺として建立され,唐初期の文化の影響を受けた(f)白鳳文化が花開いた。藤原京に都が置かれたのは710年に平城京に遷都するまでの比較的短い期間であったが,701年には大宝(g)律令が完成するなど,中央集権的国家体制の整備が飛躍的に進んでいった。
問6 ( オ )に入る適切な語句を記せ。
持統
問7 下線部(c)について,天武天皇系最後の天皇の名前を記せ。
称徳天皇(重祚する前の孝謙天皇と書くと不正解となるので注意!)
問8 下線部(d)について,藤原京に遷都する直前の宮の名前を記せ。
飛鳥浄御原宮
問9 下線部(e)について,世界で最も古い木造建築が現存する寺院名を記せ。
法隆寺
問10 下線部(f)について,白鳳文化を代表する建築物である薬師寺東塔を「凍れる音楽」と表現し,岡倉天心とともに東京美術学校の設立に尽力した明治時代のアメリカ人の名前を記せ。
フェノロサ
問11 下線部(g)について,律と令をそれぞれの性質の違いをふまえて簡潔に説明せよ。
添削します!
(E) 徳川家康は,1611(慶長16)年に(p)後水尾天皇を擁立し,天皇の譲位・即位まで武家の意向に従わせた。1615(元和元)年には禁中並公家諸法度を定め,天皇や公家が守るべき心得や朝廷運営の基準を示した。また京都所司代をおいて朝廷の監視を行い,公家の中から( サ )を選んで朝幕間の連絡にあたらせた。天皇には小大名並みの(q)領地を与えたのみで,管理も幕府が行った。1620(元和6)年,秀忠の娘(r)和子(東福門院)が後水尾天皇に入内し,幕府は1629(寛永6)年,(s)紫衣事件をきっかけに,さらに朝廷統制を厳重にした。
問23 ( サ )に入る適切な役職名を記せ。
武家伝奏
問24 下線部(p)の時,譲位した天皇の名を記せ。
後陽成天皇(在位1586年〜1611年 1588年に聚楽第に行幸したことを想起すれば解答は可能だろう。)
問25 下線部(q)の天皇領の名称を記せ。
禁裏御料
問26 下線部(r)の娘で,後水尾天皇の譲位後に即位した天皇の名を記せ。
明正天皇は、奈良時代の称徳天皇以来、859年ぶりの女帝
問27 下線部(s)の事件の際に,幕府に抗議し処罰された大徳寺の僧侶の名を記せ。
沢庵 大徳寺(臨済宗 林下)の住持
☆吉田の視点
問題自体は、ごく標準的な問題であることがわかったであろう。よって、しっかり対策を立てて実行すれば高得点も可能なのが大問1である。しかし、問11のような短文説明問題も散見され、問7の称徳天皇や問24の後陽成天皇などでいつも失点しそうなタイプの受験生は要注意である。こういうタイプの受験生は思いの外、試験本番で点数が伸びない。
合格のためには、本格的な過去問研究(これが最重要!)に基づいた「京都府立大対策」を着実に進めて行く必要がある。なお、今回の過去問(B)・(E)を分析する(過去問研究!)と次回につながるテーマとして女帝があげられる。愛子内親王の成長もあり女性天皇や女系天皇の話題もとりあげられることが多いので古代・近世に在位した6人(8代)の女帝をマークしておきたいところである。
☆大問2の「傾向と対策」(2019年2月 本試験問題分析)
例年、10行前後の史料文が2019年であれば、(A)〜(E)の5個設定され、空所補充や一問一答式的な記述式の問題(小問)が25個前後(2019年は28個)出題されている。その中でも「京都府立大の傾向をあらわした問題」である(A)と(E)を今ここで実際に解いていくことで「実感」(敵を知る)しよう。
(A)
凡そ田は,長さ三十歩,広さ十二歩を段とせよ。十段を町とせよ。〔中略〕町の租稲は( ア )束。〔中略〕
凡そ口分田を給わんことは,(a)男に二段。女は三分の一を減ぜよ。〔中略〕
凡そ(b)班田すべくは,班年ごとに,正月三十日の内に(c)太政官に申せ。十月一日より,(d)京・(e)国の官司,預(あらかじ)め校勘*して簿を造れ。〔中略〕
凡そ官戸奴婢の口分田は,良人と同じ。家人奴婢は,郷の寛狭に随いて,並びに( イ )を給え。
(『(f)養老令』田令)
* 校勘……照合・審査すること。
問1 ( ア )に入る数値として最も適切なものをつぎの①~④のうちから一つ選べ。
① 2
② 12
③ 22
④ 32
③ 租は、1段当たり二束二把(収穫の約3%)であるから、十段=1町では22束となる。
問2 ( イ )に入る言葉をつぎの①~⑤のうちから一つ選べ。
① 四分の一
② 三分の一
③ 二分の一
④ 三分の二
⑤ 四分の三
② 私有の奴婢は、良民男女のそれぞれ3分の1が班給された。
問3 下線部(a)によると,女に対する口分田の支給面積はどれだけか,記せ。
1段120歩(480歩) 1段=360歩、男は2段(720歩)が支給される。女は、その3分の2(2段から3分の1を減じる)なので2段×3分の2=1段120歩となる。
問4 下線部(b)について,桓武天皇の代に制度が改定されたが,この時には班田は何年に1回と定められたか,記せ。
12年
問5 下線部(c)について,太政官によって統括され,主に文官の人事をつかさどった官司は何か。名称を記せ。
式部省 仏事や外交をつかさどった治部省との区別に注意。
問6 下線部(d)について,聖武天皇が山背(やましろ)国に建てた京の名称を記せ。
恭仁京
問7 下線部(e)について,この機関の次官はどのように表記されるか,漢字1字で記せ。
介 国司の四等官は、守(かみ)・介(すけ)・掾(じょう)・目(さかん)。
問8 下線部(f)について,この令の官撰注釈書で,833年に完成したものを何というか,記せ。
令義解(清原夏野・小野篁らが撰者)
(E)
今般( コ )改正ニ付,旧来田畑貢納ノ法ハ悉皆相廃(あいはい)シ,更ニ( サ )調査相済(あいすみ)次第,土地ノ代価ニ随ヒ,百分ノ( シ )ヲ以テ( コ )ト相定ムベキ旨仰セ出サレ候(そうろう)条,改正ノ旨趣別紙条例ノ通相心得ベシ,〔中略〕
第一章 〔中略〕
第二章 ( コ )改正施行相成候上ハ,土地ノ原価ニ随ヒ賦税致シ候ニ付,(p)以後仮令(たとえ)豊熟ノ年ト雖(いえど)モ増税申シ付ケザルハ勿論,違作ノ年柄コレ有リ候トモ,減租ノ儀一切相成ラズ候事
(『法令全書』)
問25 ( コ )に入る適切な語句を記せ。
地租
問26 ( サ )には土地所有者に交付された証書の名称が入る。その名を記せ。
地券
問27 ( シ )に入る適切な漢数字を記せ。
三
問28 下線部(p)について,具体的にどのようなことを述べているか。江戸時代と比較しながら簡潔に記せ。
添削します。
☆吉田の視点
大問2は、全問が史料文を利用した記述式の問題となっているので史料問題対策をしっかりやった受験生と対策が甘い受験生との間で「差がついてしまう」大問と言える。史料問題を解答する能力で一番重要となるのが、史料文慣れと「想起力」である。史料文の空所補充問題では、前後の史料文の内容から、教科書の本文程度の知識と理解があれば受験生が「想起」し解答できるように問題が設定されている。この「想起」するセンスを磨く史料問題対策を実行すれば良い。吉田塾では例年、京都府立大の重要過去問(史料問題)とオリジナル史料問題を駆使した「史料問題対策」講座を開講して、ここで「ライバルに差をつける」戦略をとっている。
☆大問3の「傾向と対策」(2017〜19年 本試験問題分析)
大問3は、例年6個〜8個(古い時代は10個)の歴史用語の中から3つを選び、70字以内で説明する問題が定番化していたのだが、2019年は、4つの語句の中から2つを選ぶようになった。提示される用語数・解答する個数ともに減少したことになる。2つを選択するのは、まだ2019年だけの実績なので3つ選択を想定して対策を立てておこう。
2019年
つぎに列挙した語句の中から2つを選び,その語句を明記し,それぞれ70字以内で説明せよ。句読点やカッコ,数字は,それぞれ1字として数える。
ヴァリニャーニ(ヴァリニャーノ)
北山十八間戸
教派神道
顕戒論
2018年
つぎに列挙した語句の中から3つを選び,その語句を明記し,それぞれ70字以内で説明せよ。句読点やカッコ,数字は,それぞれ1字として数える。
石井・ランシング協定
三浦の乱
シドッチ
台湾出兵
南蛮寺
渤海使
2017年
つぎに列挙した語句の中から3つを選び,その語句を明記し,それぞれ70字以内で説明せよ。句読点やカッコ,数字は,それぞれ1字として数える。
『赤い鳥』
勘解由使
契沖
庚申講
御霊会
闘茶
労働組合法
☆吉田の視点
大問3を苦手としている受験生は多い。しかし、「彼(敵)を知り、己を知れば百戦危からず」の戦略を駆使し、過去問研究に基づいた70字で歴史用語をまとめる演習を繰り返し実践すれば、70字の用語説明問題を苦手にしている一般的な受験生に「大きく差をつける」
ことが可能です。とくに過去問研究は、年によっては大きな威力を発揮します。2018年の問題に「三浦の乱」がありますが、2011年に、すでに大問3で出題された語句でした。また、「石井・ランシング協定」は、2014年に出題された「桂・タフト協定」から容易に出題が想起できる語句であったため、塾生たちは本番でこの2語に関しては、ほぼ完璧な解答文が書けたようである。吉田塾では、このように大問3の傾向を徹底的に分析したテキストを作成して添削指導を行っています。その一部は、無料カウンセリングやお試し講座(1対1のZoom講座)でも対応しています。
☆70字の歴史用語説明問題の添削例
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文化史を習得するために必要なことについてよく理解してくれている感想文だと思います。
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