「一生役に立つ」戦略的な思考力を養う日本史の実践道場

日本史探究のための歴史総合

☆「日本史探究」選択者にとっての「歴史総合」とは

2025年1月実施の共通テストから、いわゆる「日本史(探究)」のみでの受験ができなくなり、「歴史総合」の内容が加わる「歴史総合、日本史探究」での受験となります。

受験生にとっては、「歴史総合、日本史探究」という融合科目の過去問が存在しないこともあって、どのように対策すればよいかわからず、勉強法が確立出来てない人も多いことでしょう。

たしかに過去問が存在しないので「どのような出題形式なのか」、「どのくらいの知識が、問題を解くためには必要なのか?」を事前に確認できないので対策が立てづらい、勉強しづらい感があります。

しかしながら、本番の共通テスト作成機関である「大学入試センター」(独立行政法人)では、歴史総合「サンプル問題」や試作問題『歴史総合、日本史探究』が公開されています。この「サンプル問題」や試作問題を分析すると『歴史総合、日本史探究』の出題形式や問題レベル(難易度)が見えてきます。

その分析結果の一部をここで紹介しますので参考にしてください。

試作問題の第一問
令和7年度大学入学共通テスト施策問題
歴史総合の授業で、「人やモノの移動とその影響」という主題を設定し、環太平洋地域を取り上げて、各班で発表をまとめた。二つの班の発表について述べた次の文章A・Bを読み、後の問に答えよ。(資料には、省略したり、改めたりしたところがある。) 

A 上原さんの班は、19 世紀の交通革命による世界の一体化の進行に関心を持ち、太平洋がそれとどう関わったかに着目して、調べたことをパネル 1 にまとめた。

パネル 1
◇交通革命とは何か
・主に 1850 年代から 1870 年代にかけて進行した、世界の陸上・海上の交通体系の一大変革を指す。
・船舶・鉄道など交通手段の技術革新と、新しい交通路の開発とによって、移動の時間・距離の大幅な短縮と定期的・安定的な移動・輸送の確立とが実現した。

◇海路における交通革命の主役=蒸気船
〈強み〉快速で、帆船と違って風向や海流などの自然条件に左右されにくい。
〈弱み〉燃料の ア の補給ができる寄港地が必要。

◇交通革命と太平洋
18 世紀以来、ⓐ北太平洋には、欧米の船が海域の調査や物産の獲得、外交・通 商の交渉などを目的として進出していた。しかし、19 世紀半ばまで、蒸気船を用いて太平洋を横断する定期的な交通は確立していなかった。
・ⓑアメリカ合衆国は、中国貿易の拡大を目指して太平洋への進出を図った。後の図 1 を見ると、代表的な貿易港である イ まで、アメリカ合衆国から蒸気船で最短距離で行くには、必ず日本周辺を経由することが分かる。ⓒアメリカ合衆国が、航路の安全を確保し、かつ蒸気船が往復の航海で必要とする ア を入手するためには、日本と関係を結ぶ必要があった。

 

図1 当時考えられていた太平洋横断航路

1867年、日米間の太平洋横断定期航路が開設される。

まとめ:世界周回ルートの成立で、ⓓ1870年代には世界の一体化が大きく進展。

 

1 文章中の空欄 ア に入る語句あ・いと、下線部を目的になされた出来事X〜Zとの組合せとして正しいものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

 

ア に入る語句

あ 石                    い 石   

 

下線部を目的になされた出来事

X モンロー教書(モンロー宣言)の発表
Y 日本に対するハル=ノートの提示
Z 日米和親条約の締結

① あ
② あ
③ い
④ い
⑤ あ
⑥ い

 

正解は⑥

空欄 ア には、いの石炭が入る。
下線部を目的になされた出来事は、Z=日米和親条約の締結

本問は、平易な問のため、正解を選ぶだけの知識としては「日本史探究」の教科書で十分であるが、X=「モンロー教書(モンロー宣言)の発表」が選択肢にあるのに注意だ。
モンロー教書は「歴史総合」分野の知識である。

 

 

 

問2  下線部に関連して、上原さんの班は、ロシアがアロー戦争(第 2 次アヘン戦争)の際に清から沿海州を獲得して、そこに図 1 中のウラジヴォストークを築いて拠点としたことを知り、ロシアの太平洋方面への進出に関する資料を集めた。ロシアによる沿海州の獲得時期と資料 1・2 に書かれている内容とについて、古いものから年代順に正しく配列したものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。

 

資料 1

一 今後、樺太全島はことごとくロシア帝国に属し、宗谷海峡を両国の境界とする。

一 ロシア国皇帝陛下は、引き換えに千島列島の全ての権利を日本国皇帝陛下に譲り、今後は千島全島は日本に属する。

 

資料 2

ロシアから使節が派遣されてきたのは、女帝エカチェリーナ2世の使節ラクスマンが遣わされ、幕府に漂流民を送り届けるために来航してきたことなどが始まりであった。

 

① 資料1 - 資料2 - 沿海州の獲得
② 資料1 - 沿海州の獲得 - 資料2
③ 資料2 - 資料1 - 沿海州の獲得
④ 資料2 - 沿海州の獲得 - 資料1
⑤ 沿海州の獲得 - 資料1 - 資料2
⑥ 沿海州の獲得 - 資料2 - 資料1
 

問2の解答・解説
正解は④

資料1は1875年に締結された樺太・千島交換条約で、資料2は1792年のラクスマンの根室来航であり、「日本史探究」分野の知識であるが、ロシアの沿海州の獲得は、1856年~1860年のアロー戦争後の北京条約によってなされた。この知識は「歴史総合」分野であるので「日本史探究」だけの学習(知識)では自信をもって古い順にならべることはできない。

 

上原さんの班は下線部ⓑに興味を持ち、当時アメリカ合衆国政府を代表した軍人の報告書である資料3を見つけた。文章中の空欄 イ に入る語句あ・いと、パネル 1 及び資料 3 から類推できる事柄X・Yとの組合せとして正しいものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。

資料 3

アメリカ合衆国とメキシコとの戦争終結の条約によって、カリフォルニア地方は合衆国に譲渡された。同地方が太平洋に面する地の利から、人々の関心は自然と商業分野の拡大に向けられた。(中略)もし、東アジアと西ヨーロッパとの間の最短の道が(この蒸気船時代に)アメリカ合衆国を横切るならば、わが大陸が、少なくともある程度は世界の交通路となるに違いないことは十分明白であった。

 

イ に入る語句

あ 上                    い 広   

 

パネル1及び資料3から類推できる事柄

X アメリカ合衆国は、自国がヨーロッパから東アジアへの交通路になることを警戒している。
Y アメリカ合衆国の見通しが実現するためには、大陸横断鉄道の建設と太平洋横断航路の開設との両方が必要である。

 

 

① あ-X
② あ-Y
③ い-X
④ い-Y

 

問3の解答・解説

空欄 イ には、あの上海が入る。図1が指している中国の港が上海であることは「日本史探究」でも学習できる。パネル 1 及び資料 3 から類推できる事柄としてYを選ぶことは、全体を読み込んでいればYであると判断ができるとは思うが、厳密に自信をもってYを選ぶためには「大陸横断鉄道」の開通(1869年)を知っておく必要があり、これは「歴史総合」でしか得られない知識となっている。

 

実際に試作問題を解いてみてどうでしたか?
共通テスト「歴史総合 日本史探究」で必要とされる歴史総合分野の知識レベルがある程度、見えてきたんじゃないかな。

☆「大学入試センター」(独立行政法人)発表の「歴史総合、日本史探究」試作問題では、「歴史総合」の問題として最初の大問(第一問 小問9個)が設定されている。なお、第二問~第六問は「日本史探究」分野からの出題であった。

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